物価が上がり、周りから「今年は給料が上がった」という話が聞こえてくるなかで、自分の会社だけ給料が変わらない。そう感じている人は少なくないと思います。
私は管理職として、予算や人の配置を決める場に関わる立場にいます。その立場から見て思うのは、給料は会社の中で最後に動くもので、その前に別のものが静かに減っていくということです。
この記事では、まず賃上げの調査で「給料が上がらない会社」がどれくらい少数派なのかを確かめ、そのうえで、給料より先に削られやすい5つのものと、自分の会社を確かめる方法を書きます。
給料が上がらない会社は、どれくらいあるのでしょうか?
少数派です。賃上げをした会社は9割を超えています。
厚生労働省の「令和7年 賃金引上げ等の実態に関する調査」(常用労働者100人以上の会社)では、1人あたりの平均賃金を引き上げた、または引き上げる会社は91.5%でした。
帝国データバンクが2026年1月に行った調査(10,620社)では、2026年度に賃金の改善を見込まない会社は11.8%でした。その理由で最も多かったのは「自社の業績低迷」で、55.1%です。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 賃金を引き上げた・引き上げる会社(100人以上) | 91.5% |
| 2026年度に賃金改善を見込まない会社 | 11.8% |
| 見込まない理由「自社の業績低迷」 | 55.1% |
出典:厚生労働省「令和7年 賃金引上げ等の実態に関する調査」(2025年10月14日公表)、帝国データバンク「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」(2026年2月24日公表)
給料が上がらない会社は、多くの会社が賃上げをしているなかで、少数の側にいることになります。

給料が上がらない会社では、給料より先に何が削られるのでしょうか?
会社の外とのつながり、人への投資、仕組みへの投資です。
ここから先は、統計で「給料が上がらない会社ほど◯◯を削る」と示されているわけではありません。予算を決める場に関わる立場から見て、給料より先に手がつけられやすいものを5つ挙げます。

1. 外の人と会う機会
会食、出張、外部の勉強会。目に見える成果にすぐ結びつかない費用は、真っ先に削られます。外の話が社内に入ってこなくなり、気づかないうちに視野が狭くなります。
2. 社員の教育
厚生労働省の「令和7年度 能力開発基本調査」では、研修(OFF-JT)や自己啓発の支援にお金を出した会社は54.4%でした。半分をやや超える程度です。研修の予算は、削っても翌月の売上には響かないため、手をつけられやすい費用です。
教育にお金が出ない会社でも、国の制度を使って学び直す方法はあります。教育訓練休暇給付金の記事にまとめました。
3. 人を採ること
辞めた人の席が埋まらないまま、残った人の仕事が増えていきます。採用を止めるのは、給料を下げるより反発が少ないため、先に選ばれやすい手です。
4. 道具と仕組み
古いパソコン、古い業務システムのまま、手作業で回す仕事が残ります。手間が人に回ってくるので、同じ給料で仕事だけが重くなります。
5. 上がる人の数
役職の席を減らしたり、昇格する人を絞ったりします。給料表を変えなくても、昇格する人が減れば、会社全体の人件費は抑えられます。社員から見ると、給料が上がらない理由が見えにくい形です。
役職の席が減っていく話は、管理職は罰ゲームなのかでも触れました。
いまの年収が同じ年代の中でどのあたりにいるのかは、国の統計(令和7年賃金構造基本統計調査)で確かめられます。
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自分の会社が当てはまるかどうかは、どう確かめればよいのでしょうか?
この1〜2年で、5つのうちいくつ減ったかを数えてみることです。
- 社外の勉強会や出張が、理由なく通らなくなった
- 研修の案内が届かなくなった
- 辞めた人の後任が来ない
- 古い道具やシステムが、そのまま使われ続けている
- 昇格した人の話を聞かなくなった
1つや2つなら、どの会社でも起きることです。ただ、3つ以上が同じ時期に重なっているなら、給料の話になる前に、会社はもう別のところで答えを出しているのかもしれません。
給料が上がらない会社にいると感じたら、何から始めればよいのでしょうか?
辞めるかどうかを決める前に、自分の値段を外で確かめることです。

給料が上がらない理由が会社の業績にあるなら、自分の努力だけで給料を上げるのは難しくなります。いっぽうで、外で自分の経験がどう評価されるかは、会社の業績とは関係なく決まります。
社内での評価と外での評価がずれる理由は、社内評価と市場価値がずれる理由に書きました。40代・50代の転職で賃金が実際にどう変わっているかは、年代別の数字をまとめた記事で確かめられます。
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まとめ
- 賃上げした会社は91.5%(100人以上)。給料が上がらない会社は少数派
- 2026年度に賃金改善を見込まない会社は11.8%。理由の最多は業績低迷(55.1%)
- 給料より先に削られやすいのは、外と会う機会・教育・採用・道具と仕組み・昇格の枠
- 研修や自己啓発にお金を出している会社は54.4%
- 自分の会社は、この1〜2年で5つのうちいくつ減ったかで確かめる
- 辞めるかどうかの前に、外での自分の値段を確かめておく
給料は最後に動きます。その前に、手前のものから静かに減っていきます。給料が上がらないと感じたときは、給与明細より先に、職場で何が減ったかを見てみると、会社の状況が見えてきます。
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