上からは「この方針で進めてほしい」と言われる。下からは「現場では無理です」と言われる。どちらの言い分も分かるので、どちらにも強く言えない。中間管理職の板挟みは、まじめな人ほどつらくなります。
私は部長職として、課長の板挟みを上から見る立場にいます。課長だったころは、下から見上げる立場でした。両方の側から見て分かったのは、板挟みがつらくなる人には共通点があるということです。この記事では、その共通点と、先に決めておく一つのことを書きます。
中間管理職の板挟みは、なぜ増えているのでしょうか?
上から降りてくるものも、下から上がってくるものも、両方増えているからです。
産業能率大学が2023年に上場企業の課長809人に聞いた調査では、職場の変化として次の項目が上位に並びました。
| 職場の変化(2019年と比べて) | 割合 |
|---|---|
| コンプライアンスが厳しくなった | 49.3% |
| 知識やスキルの更新が常に求められている | 44.4% |
| 社員の平均年齢が上がっている | 38.4% |
| 業務量が増えている | 38.3% |
上からは守るべきルールと覚えるべきことが増え、下からは年齢も事情もさまざまな部下の声が上がってくる。同じ調査で、人事の施策に満足していると答えた課長は25.0%でした。課長の負担が増えているのに、会社の仕組みはそれに追いついていない、という見え方です。
板挟みがつらくなる人は、何をしているのでしょうか?
上の言い分も、下の言い分も、全部自分で受け止めようとしています。
板挟みがつらい課長は、上の方針を下に伝えるときに、下の不満を先回りして和らげようとします。下の不満を上に伝えるときも、上の機嫌を損ねないように言葉を選びます。結果として、どちらにも本当のことが伝わらないまま、課長だけが両方の重さを抱えます。
上から見ていると、こういう課長からは現場の本当の状況が上がってきません。下から見ても、課長が何を考えているのかが分かりません。板挟みは、間にいる人が全部を吸収しようとするほど深くなります。

先に決めておく一つのことは、何でしょうか?
「この件で、自分は何を決める人なのか」を、先に決めておくことです。
上の方針には、課長が変えられない部分と、課長が決めていい部分があります。たとえば「売上目標」は変えられなくても、「どの顧客から手をつけるか」は課長が決めていい、というようにです。
板挟みでつらいときは、この線が引けていないことが多いです。線が引けると、伝え方がこう変わります。
- 下に伝えるとき:「目標は変えられない。ただ、進め方はこのチームで決める。意見を聞かせてほしい」
- 上に伝えるとき:「方針は進めます。ただ、この部分は現場の事情でこう変えます」
変えられない部分は、自分が背負わずに「会社の決定」としてはっきり伝える。決めていい部分は、自分の名前で決める。これだけで、両方の重さを全部抱える状態から抜けられます。
上に意見を言うときは、どう言えばいいのでしょうか?
不満ではなく、判断の材料として上げます。
現場の不満をそのまま上に伝えても、上の判断は変わりません。上が知りたいのは、方針を進めたときに何が起きそうかです。
「部下が嫌がっています」ではなく、「このまま進めると、この顧客の対応に遅れが出ます。代わりにこの順番で進めたいです」と言う。上の立場から見ると、こういう課長の話は判断に使えるので、通りやすくなります。
それでも板挟みがつらいときは、どうすればいいのでしょうか?
役割の線を、自分の上司と一度すり合わせます。
決めていい範囲が分からないまま、課長が一人で線を引くのは難しいことです。「この件について、私はどこまで決めていいですか」と自分の上司に聞くのは、弱さではありません。上から見ると、むしろ仕事が速くなる課長です。
すり合わせても線が引けない、決めていい範囲がほとんどない、という場合もあります。そのときは、板挟みの問題ではなく、その役割の設計の問題です。続けるかどうかを考える材料になります。

よくある質問
板挟みで部下に嫌われるのが怖いです。
変えられない部分を「会社の決定」としてはっきり伝えたほうが、部下からの信頼は落ちにくいです。あいまいに和らげると、あとで「課長も同じ考えだった」と受け取られます。
上の方針に自分も納得していないときは?
納得していない部分を隠さずに、「ここは自分も確かめている」と伝えてかまいません。全部に賛成しているふりをするより、分けて話したほうが、残りの部分を信じてもらえます。
まとめ
- 板挟みが増えているのは、上から降りてくるものも、下から上がるものも増えているから
- つらくなるのは、両方の言い分を全部自分で受け止めようとするとき
- 先に「この件で自分は何を決める人か」の線を引く
- 変えられない部分は会社の決定として伝え、決めていい部分は自分の名前で決める
- 上には不満ではなく、判断の材料として上げる
板挟みは、間に立つ人の性格の問題ではなく、線の引き方の問題です。
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出典
- 産業能率大学 総合研究所「第7回 上場企業の課長に関する実態調査」(2023年10月発表・課長809人)