学び直しをしたいけれど、会社を辞めるほどではない。かといって、働きながら夜に勉強する時間も体力も残っていない。40代になると、こういう人は少なくないと思います。
2025年10月に、その間を埋める制度が始まりました。教育訓練休暇給付金です。会社を辞めずに、学ぶために無給で休む。その間の生活費の一部を、雇用保険から受け取れます。
制度の説明は、会社の人事向けや社労士の記事がすでに詳しく書いています。この記事では、40代の会社員が使う前に確かめておくことと、休暇を承認する側の上司から見えることを書きます。私は評価をつける側にいるので、「部下からこの休暇を申し出られたら」という目線も入れています。
教育訓練休暇給付金とは、どんな制度なのでしょうか?
会社を辞めずに学ぶための休暇中に、失業手当と同じ日額が出る制度です。
始まったのは2025年10月1日です。これまでの雇用保険には、辞めたあとの生活を支える給付(基本手当)と、講座の費用を補助する給付(教育訓練給付)はありました。ただ、在職したまま、仕事を休んで学ぶ期間の生活費を支える給付はありませんでした。そこを埋めるのがこの制度です。
| 中身 | |
|---|---|
| 始まった時期 | 2025年10月1日 |
| 受け取れる額 | 離職したときの基本手当と同じ日額(賃金と年齢で決まる) |
| 受け取れる日数 | 雇用保険に入っていた期間に応じて90日・120日・150日 |
| 受け取れる期間 | 休暇を始めた日から1年以内 |
誰が使えるのでしょうか?
雇用保険に5年以上入っていて、会社に「学ぶための休暇」の制度がある人です。
条件は、大きく分けて次の3つです。
- 雇用保険に入っていた期間が、通算で5年以上ある
- 休暇を始める前の2年間に、雇用保険に入っていた期間が12か月以上ある
- 就業規則や労働協約などに定めた制度にもとづいて、30日以上の無給の休暇を取る。本人が申し出て、会社が承認したものに限る
学ぶ先は、大学や大学院、短大、専門学校のほか、教育訓練給付の講座の指定を受けている機関などです。
40代の会社員なら、1と2はたいてい満たしています。引っかかるのは3つ目です。
いちばんの壁は、どこにあるのでしょうか?

法律ではなく、自分の会社の就業規則です。
この給付は、会社に教育訓練休暇の制度があって、それを使って休んだときにだけ出ます。制度が就業規則に書かれていなければ、本人がどれだけ学ぶ気があっても使えません。
ここで確かめることは、次の3つです。
- 就業規則(または別の規程)に、教育訓練のための休暇が書かれているか
- 書かれているなら、何日まで、どんな学び先なら認められるか
- 申し出てから承認されるまでに、どのくらいの期間が要るか
書かれていない場合、会社に制度をつくってもらえるかは別の話になります。少なくとも、制度がない状態で「休ませてほしい」と言っても、この給付は出ないことは知っておいたほうがいいと思います。
何日もらえるのでしょうか?

雇用保険に入っていた期間で、3段階に分かれます。
| 雇用保険に入っていた期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
大学を出てから途切れずに雇用保険に入っていれば、40代前半で20年に届く計算になります。転職していても、間をあけずに次の会社へ移っていれば、期間は通算されます。40代は、いちばん長い150日に届きやすい年代です。
1日あたりの額は、離職したときの基本手当と同じ考え方で、休む前の賃金と年齢から決まります。給料の全額が出るわけではありません。
使う前に、知っておきたい注意点はありますか?
給付を受けると、それまでの雇用保険の期間が、あとの失業手当の計算に使えなくなります。
第一生命経済研究所の解説では、この給付を受けると、休暇を始める前の被保険者期間が、失業給付を受けるための期間から除かれると説明されています。
つまり、「学び直したあと、すぐに転職するかもしれない」人は、順番を考えたほうがいいということです。学び直しが終わってすぐ会社を辞め、次が決まらなかったとき、それまで積み上げてきた期間が使えないことがあります。
| こういう人には向いている | こういう人は順番を考える |
|---|---|
| 学んだあとも、いまの会社で働くつもり | 学んだあと、すぐに辞めるつもり |
| 社内で次の役割に移るための学び直し | 失業期間を見込んだ転職 |
細かい扱いは、ハローワークで自分のケースを確かめるのが確実です。
上司の側からは、どう見えるのでしょうか?

応援したい気持ちと、30日以上の穴をどう埋めるかが、同時に来ます。
評価をつける側として、部下からこの休暇を申し出られたときに考えることを書いておきます。
- その人の仕事を、30日以上だれが持つのか
- 休暇の期間が、評価の期間とどう重なるのか
- 戻ってきたとき、学んだことを使える仕事を用意できるか
3つ目がいちばん大事だと思っています。学び直して戻ってきたのに、前と同じ仕事しかないと、本人は学んだことを社外で使おうと考えます。それ自体は悪いことではありませんが、上司としては送り出す前に、戻ってきたあとの話をしておきたいところです。
申し出る側から見ると、逆になります。「学んで、戻ってきて、こう使いたい」まで話せると、承認はぐっと通りやすくなります。休むことの説明より、戻ってきたあとの説明のほうが、上司には効きます。
40代で使うなら、何から始めればいいでしょうか?
学ぶ中身より先に、就業規則を開くところからです。
- 就業規則に、教育訓練のための休暇が書かれているか確かめる
- 書かれていれば、人事に手続きの流れを聞く(申請は会社を通してハローワークに行います)
- 上司に話す前に、「学んだあと、どう使うか」を一文にしておく
学び直しの中身は、そのあとで決めても間に合います。使える制度かどうかは、会社の規程で先に決まってしまうからです。
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まとめ
- 教育訓練休暇給付金は、会社を辞めずに学ぶための無給の休暇中に、失業手当と同じ日額が出る制度。2025年10月1日に始まった
- 条件は、雇用保険に通算5年以上、休暇前2年間に12か月以上、就業規則などにもとづく30日以上の無給の休暇
- 日数は90日・120日・150日。40代は150日に届きやすい
- いちばんの壁は法律ではなく、自分の会社の就業規則
- 給付を受けると、それまでの雇用保険の期間があとの失業手当に使えなくなる。すぐ辞めるつもりなら順番を考える
- 上司に話すときは、休む理由より「戻ってきてどう使うか」を先に
学び直しは、辞めるか残るかの二択の外にある、三つ目の道です。ただ、その道が開いているかどうかは、会社ごとに違います。
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出典
- 厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第203回)資料3「教育訓練休暇給付金について」(2025年1月16日)
- 厚生労働省 雇用保険課「教育訓練休暇給付金について」(2025年3月12日)
- 第一生命経済研究所「【1分解説】教育訓練休暇給付金とは?」(2026年1月15日)