
「自分は管理職に向いていない」と思ったことはありませんか。
私は現役の管理職で、部長職にいます。部下の評価をつける立場にいて、「向いてないと思います」と言われたことがあります。
そのとき私は、その人の能力を見ませんでした。見たのは別のところです。この記事では、何を見たのかと、なぜそこを見たのかを書きます。
「向いていない人の特徴」を並べる記事ではありません。その特徴リストを読んでも楽にならない理由から書きます。
「管理職に向いていない」と感じるのは、珍しいことなのか?
まったく珍しくありません。むしろ、いちばん多い理由です。
日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が2023年4月に行った「管理職の実態に関するアンケート調査」(管理職1,072名・一般社員1,116名/従業員300名以上)で、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と答えています。2018年の72.8%から増えています。
そして、なりたくない理由の1位がこれでした。
「自分は管理職に向いていないから」(46.6%)
「報酬が見合わない」でも「責任が重い」でもなく、向いていないからが最も多い。
つまり、いま「向いていない」と感じているとしても、それはあなたが特別に不向きだという証拠にはなりません。この国でいちばん多く共有されている感覚です。
向いていないと感じる人には、何が足りていないのか?

能力より先に、「ひとりでやっている感覚」が効いています。
リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に発表した調査(管理職188名・一般社員166名)に、はっきりした数字が出ています。管理職を「続けたい」と答えた割合です。
| 状態 | 管理職を続けたい割合 |
|---|---|
| 孤独感が低い管理職 | 70.2% |
| 孤独感が高い管理職 | 40.6% |
| 上司や組織からの支援を感じている管理職 | 65.2% |
| 支援を感じていない管理職 | 41.6% |
孤独感の有無だけで、続けたい割合が約30ポイント動いています。
ここで注目したいのは、この表に能力の項目が一つもないことです。マネジメントスキルでも、部下の人数でも、経験年数でもない。ひとりで背負っているかどうかで、これだけ変わります。
「向いていない」という感覚の正体は、多くの場合、能力不足ではなく孤立です。
「向いていない人の特徴」を読んでも楽にならないのは、なぜか?

あの特徴リストは、原因ではなく結果を並べているからです。
検索すると出てくる特徴は、だいたいこの手のものです。
- 抱え込んでしまう
- 人に任せられない
- 感情的になる
- 決断が遅い
読むと、全部当てはまります。私も当てはまります。
でも、よく見てください。これは孤立して判断が詰まっている人に、そのまま出る症状です。順番が逆なのです。
性格が原因で抱え込んでいるのではなく、相談先がないから抱え込んでいる。決断力がないから遅いのではなく、承認してくれる人がいないから決められない。
原因と結果を取り違えたリストを読むと、「やっぱり自分の性格の問題だ」という結論にしかたどり着けません。だから、読んでも楽にならないのです。
上の立場から見ると、「向いていない」と言ってきた人はどう見えるのか?
能力の話をしに来ているのに、話の中身は全部、環境の話になっています。
「向いてないと思います」と言われたとき、続けて出てくるのは、たいていこういう話です。
- 決めていいのかどうか分からないまま、決めている
- 相談すると「それは君が決めることだ」と返ってくる
- 失敗したときに、誰も一緒に立ってくれない気がする
どれも、その人の適性の話ではありません。その人が置かれている状態の話です。
私はここで一度、能力の話から降りることにしています。能力を評価すると、本人の「やっぱり自分がだめだ」を追認してしまうからです。追認しても、何も動きません。
代わりに聞くのは、「最近、誰かに相談しましたか」です。ここで詰まる人が、かなりいます。
本当に向いていない人と、向いていない状態の人は、どう違うのか?
時間の向きが違います。
私が見てきた範囲では、この2つは別物です。
向いていない状態の人は、過去の話をします。あのときこう決めればよかった、あの案件で失敗した、という話です。つまり、まだ仕事のことを考えています。
本当に向いていない人は、未来の話をします。それも、期待の話ではなく、避けたいことの話です。来期もこれが続くのかと言い、具体的な仕事の中身には触れません。仕事ではなく、役割そのものから降りたがっています。
前者は、環境を変えると戻ります。後者は、環境を変えてもあまり変わりません。
どちらが優れているという話ではありません。後者は「向いていない」というより、やりたいことが別にあるというだけです。それは欠点ではないので、そう扱う必要はありません。
自分がどちらなのか、どうやって確かめるのか?
この3つを、数で確かめられます。感覚で判断しないほうが正確です。
- この1か月で、仕事の判断について誰かに相談した回数
ゼロなら、能力ではなく孤立の問題です。順番として、まずここを動かします。 - 自分が決めたことを、あとから支持してくれた人がいたか
いない状態が続くと、決めるたびに消耗します。これは性格では耐えられません。 - 管理職の仕事のうち、面白いと思える部分が一つでもあるか
先ほどの調査で、「チームマネジメントが面白い」と答えた割合は、前向きな管理職で86.8%、後ろ向きな管理職で20.8%でした。66ポイントの差です。ここがゼロなら、状態の問題ではない可能性があります。
1と2がゼロで、3が残っているなら、向いていないのではなく、孤立しています。
1と2があるのに3がゼロなら、役割そのものが合っていないという判断に近づきます。
「降りる」という選択は、負けなのか?
データを見る限り、能力の問題として扱われていません。
さきほどのリクルートマネジメントソリューションズの調査で、管理職を「続けたくない」と答えた人の理由の1位は業務負荷でした。「能力が足りないから」ではありません。
管理職を続けたいと答えた人は約6割で、残りの4割が続けたくないと答えています。つまり、降りたいと思っている人は少数派ではありません。
それでも降りる選択が取りにくいのは、降りたあとの居場所が用意されていない会社が多いからです。これは個人の勇気の問題ではなく、制度の問題です。
降りるかどうかを決める前に、自分の経験が社外でどう見えるかを知っておくこと自体は、辞めなくてもできます。 管理職として判断してきた経験は、社内では当たり前に見えても、外では希少なことがあります。
自分がどのタイプで、何を強みとして見られるのかは、転職タイプ診断で確かめられます。
続けると決めたとき、最初に変えることは何か?

能力を上げる前に、ひとりで決めている状態をやめます。
順番を間違えると効きません。研修や本から入ると、たいてい「また増えた」になって終わります。
私がやったのは、次の2つでした。
- 決めたことを、決めた理由と一緒に上に伝える(許可をもらうためではなく、記録を残すため)
- 同じ立場の人と、月に一度でいいので話す(解決策は要りません。同じことで困っていると分かるだけで、孤独感の数字は動きます)
2つめは効きます。孤独感が低い管理職の7割が続けたいと答えている、というのはそういうことです。
スキルを身につけるのは、そのあとで間に合います。
まとめ:「管理職に向いてない」と感じたときに確かめること
- 向いていないと感じるのは例外ではない(管理職になりたくない理由の1位が「向いていないから」46.6%)
- 続ける意思を動かしているのは能力ではなく孤独(孤独感が低いと70.2%、高いと40.6%)
- 「向いていない人の特徴」リストは、原因ではなく結果を並べている
- 向いていない状態の人は過去の話をし、本当に向いていない人は役割そのものから降りたがる
- 相談回数がゼロなら、まず能力ではなく孤立を疑う
私は上の立場で、「向いてないと思います」と言われたときに、励まして終わりにしたことがあります。何も変わりませんでした。変わったのは、その人が何を一人で抱えているかを具体的に聞き出したあとでした。
この記事を書いた人
会社員はまち
現役の管理職(部長職)。デジタルマーケティング・EC領域。部下の人事評価をつけ、中途採用の面接をする立場にいます。転職は4回。転職がうまくいき始めたのは30代後半からでした。
40代・50代の会社員に向けて、制度と働き方について書いています。
- note:会社員はまち|note
- 抱え込みを減らす手順は、2026年10月8日に有料の記事としてまとめます
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出典
- 日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)「管理職の実態に関するアンケート調査」(2023年4月実施・インターネット調査・管理職1,072名/一般社員1,116名・従業員300名以上)
- リクルートマネジメントソリューションズ「管理職のあり方に関する実態調査」(2026年2月24日発表・管理職188名/一般社員166名)