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社内評価と市場価値がずれる理由|評価をつける側で見えたことと、ずれを測る3つの方法

2026年9月24日

左には会社員が同僚たちに囲まれて立ち、右には同じ会社員が一人だけで立っているイラスト

社内で評価が高い人が、外に出ても同じように評価されるとは限りません。その逆もあります。

このずれは、気分の問題ではありませんでした。社内と社外で、見られている場所が違うというだけの話です。

部長職として、評価をつける側の会議にも、受ける側の会議にも出てきました。そこで見えた構造と、厚生労働省の調査で確かめられる数字を並べます。


評価会議で、点が動く瞬間

評価は、一人の上司が決めるものではありません。複数の管理職が集まって、すり合わせます。自分の部下について説明し、他部署の管理職から質問を受ける。そこで点が上下します。

見ていて意外だったのは、点が伸びないのは、成果があいまいな人ではなかったことです。

伸びないのは、周りがその人の仕事を説明できない人でした。

こちらが「彼は今期よくやりました」と言う。他部署の管理職が「何をしたんですか」と聞く。説明する。相手が「そうなんですね」と返す。この「そうなんですね」が出た時点で、点はもう動きません。

逆に「ああ、あの件の人ですね」と言われた瞬間には、点が上がります。すでに知られていると、こちらの説明が確認になるからです。

つまり評価は、実力そのものより、知られている範囲の広さで決まっていました。

この場面をもう少しくわしく書いたものが、note のほうにあります。→ 人事評価をつける側にいて分かった、社内評価と市場価値がずれる理由


外で見られているのも、同じ場所です

では社外はどうか。厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」に、事業所側の回答が載っています。

転職者を採用する際に重視した事項(複数回答)

項目割合
職務経歴・職業能力56.4%
勤務地43.8%
年齢42.0%
雇用形態の希望29.1%
勤続年数17.3%

採用した理由のほうも、同じ方向を向いています。

理由割合
必要な職業能力を備えた人材を確保するため66.1%
職務経歴のある人材を確保するため62.3%

どちらも一番上に来ているのは、職務経歴と職業能力です。言い換えると「何を、どこまでやったか」が説明できる形になっているかどうか。社内の評価会議で点が動いていた場所と、同じところが見られています。

注目したいのはいちばん下です。勤続年数は17.3%しかありません。

社内では、長くいること自体が効きます。経緯を知っている、誰に話を通せばいいか分かる、あの部署にパイプがある。どれも本物の価値で、私も評価します。ただ、それは採用する側の上位5項目のうち、最下位の要素でした。

もうひとつ、3番目に年齢が42.0%で入っています。ただ、募集や採用で年齢を条件にすることは原則として禁じられていて、求人票の側からは見えません。この食い違いについては転職の「年齢の壁」は45歳か50歳かで別に整理しています。

※この調査は令和2年(2020年)に実施されたものです。以降の同調査は公表されていません。


では、なぜずれるのか

左に積まれた五つの箱と、そこから離れて置かれた二つの箱の横に会社員が立っているイラスト

社内と社外で見られている場所が同じなら、なぜずれるのか。

「知られている範囲」の中身が違うからです。

社内で知られているのは、たとえばこういうことです。

  • あの件は、まず誰に話を通せばいいか知っている
  • 過去の経緯を覚えている
  • 稟議の通し方が分かっている
  • あの部署とのパイプがある

どれも価値です。社内では確実に効きます。

ただ、この4つは会社を出た瞬間に消えます。 持ち出せません。

一方で、外に持ち出せるのはこういうものです。

  • 何を、どこからどこまで動かしたか
  • そのとき数字はどれだけ動いたか
  • 自分がいなければ、それは起きなかったか

社内評価の中に、消える資産と持ち出せる資産が混ざっている。その比率が人によって違うので、社内で高くて外で低い人も、社内で低くて外で高い人も出てきます。


ずれは、実際に両方向に出ています

「社内で低いから外でも通用しない」と考える人は多いのですが、数字はそうなっていません。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査で、転職して入職した人の賃金がどう変わったかを見ると、こうです。

割合
増加した40.5%
減少した29.4%
変わらない28.4%

上がった人が4割、下がった人が3割。どちらか一方に寄ってはいません。 外に出てみるまで、どちらに転ぶかは決まっていないということです。

この数字が年齢でどう変わるかは、転職で賃金が上がる人と下がる人の割合は、40代と50代で逆転しますのほうで整理しています。

そして多くの場合、自分がどちらなのかを知らないまま、残るか動くかを決めようとしています。 値段を見ないまま、家を売るか持ち続けるかを決めるようなものです。決められるはずがありません。


ずれの幅を測る3つの方法

壁に同じ大きさの白い紙が横一列に貼られ、その手前に会社員が立って見ているイラスト

幅を知るのに、転職活動をする必要はありません。軽い順に3つあります。

1. 同じ職種・同じ年次の求人票を10件見る

応募しなくてかまいません。提示額を10件並べるだけで、だいたいの位置が見えます。

2. 職務経歴書を書いてみる

出さなくてかまいません。大事なのは書けない部分のほうです。書けなかったところが、そのまま「社内でしか通じない仕事」です。書けなさが情報になります。

何を書けばいいのか分からないときは、40代で「職務経歴書に書くことがない」と感じたときに、何を書けばいいのかにまとめてあります。

3. エージェントに登録して、放置する

スカウトが来るか来ないか。来るとしたら、どういう会社からか。来ない、というのも情報です。

3つとも、辞める決心とは関係なくできます。


消える資産は、書き直せることがあります

方法2で「書けない」と感じた部分は、価値がないのではなく、社内の言葉のままになっているだけのことがあります。何をしたかではなく、何が動いたかに書き直すと、持ち出せる形になります。

社内の言葉のまま書き直したあと
部門間の調整を担当した合意に3か月かかっていた承認を、関係部署を1つの会議に集める形に変えて、2週間に縮めた
若手の育成を任されていた新しく入った人が独り立ちするまでの手順を文書にして、引き継ぎの期間を半分にした
あの部署にパイプがある止まっていた案件を、相手側の判断基準を聞き取ったうえで条件を組み直し、通した

左はどれも社内では通じます。ただ、初対面の人には何が起きたのか分かりません。右は、会社を知らない人が読んでも輪郭がつかめます。

やったことは同じです。 変えているのは、動いたものを主語にする、という一点だけです。

書き直せない項目も出てきます。それが本当に社内でしか通じない部分で、そこが分かること自体が収穫になります。


受ける側に立っていて感じること

評価をつける側に回るまで、この構造には気づいていませんでした。

気づいてから振り返ると、社内でしか通じない資産のほうが、思っていたよりずっと溜まっていました。しかもそれは、社内でちゃんと評価されていたので、自分では気づきにくいものでした。評価が高いこと自体が、確かめる理由をなくしてしまいます。

外の値段を知ったうえで残るなら、それは消極的な残留ではなく、選んだ残留になります。知らないまま残っていると、何年かして同じことをもう一度考えることになります。

年齢によって何が変わるかについては、転職の「年齢の壁」は45歳か50歳かのほうで、法律と統計の両方から見ています。


まとめ

社内の評価が動く場所実力そのものより、知られている範囲の広さ
企業が中途採用で重視する1位職務経歴・職業能力 56.4%(令和2年 転職者実態調査)
同 最下位勤続年数 17.3%。社内でいちばん効くものが、外では最後
転職後の賃金増加40.5%/減少29.4%/変わらない28.4%(令和6年 雇用動向調査)
測り方求人票を10件見る/職務経歴書を書いてみる/エージェントに登録して放置する

社内評価を市場価値の代わりに使っている人は多いのですが、根拠はありません。中に混ざっている「持ち出せる資産」と「消える資産」の比率が、人によって違うからです。

順番としては、まず自分の値段を知る。決めるのは、そのあとになります。


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出典

  • 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」事業所調査
  • 厚生労働省「令和6年雇用動向調査 結果の概要」

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