年上の部下に、指示を出しにくい。言い方を選んでいるうちに、伝えるべきことが伝わらないまま一週間が過ぎる。管理職になると、どこかで一度は通る場面だと思います。
私はいま部長職として、評価をつける側にいます。年上の部下を持ったことも、年上の部下を持つ課長を見てきたこともあります。この記事では、年上の部下とこじれる理由と、最初に変えることを書きます。
年上の部下は、これから増えるのでしょうか?
増えます。役職を外れたあとも、同じ会社で働き続ける人が多くなっているからです。
東京商工リサーチの2025年の調査では、役職定年の制度を取り入れている大企業は41.0%でした。役職定年では、一定の年齢で役職を外れて、元の部署に残ることがよくあります。昨日まで課長だった人が、翌日から別の課長の部下になる、という形です。
さらに、2025年4月からは、65歳までの雇用が希望する人全員を対象にするようになりました。役職を外れてから会社にいる年数は、以前より長くなっています。
産業能率大学の2023年の調査(上場企業の課長809人)でも、職場の変化として「社員の平均年齢が上がっている」を選んだ課長が38.4%いました。年上の部下は、特別な状況ではなくなりつつあります。
年上の部下と、何がこじれるのでしょうか?
こじれるのは、敬意の量ではなく、仕事の渡し方です。
年上の部下とうまくいかない課長の話を聞くと、多くが「失礼のないように」と気をつけています。言葉づかいは丁寧で、頭ごなしに言うこともありません。それでもこじれます。
原因はたいてい、遠慮から仕事の渡し方があいまいになることにあります。
- 期限をはっきり言わない
- 期待している出来を言わない
- できあがったものを見ても、直してほしい点を言わない
年下の部下なら言えることを、年上の部下には言わない。すると年上の部下の側からは、何を期待されているのか分からないまま、仕事だけが来る状態になります。
若い管理職を対象にした調査(あしたのチーム、2024年7月、30歳以下の管理職216人)では、年上の部下との関わりでいちばん苦労することとして、「仕事に対する価値観の違い」が32.3%で最も多くなっていました。価値観は変えられません。ただ、渡し方は変えられます。
年上の部下は、管理職のどこを見ているのでしょうか?
決める人として、決めているかどうかを見ています。
元管理職の部下は、管理職の仕事がどういうものかを知っています。だから、課長が判断を先送りしたり、上の意向をそのまま流したりすると、すぐに気づきます。
年上の部下が冷ややかになるのは、年下に指示されたからではありません。決めるべき人が決めていないからです。逆に、課長が自分の言葉で「この件はこう決めた。理由はこうだ」と言えば、年上の部下はたいてい動いてくれます。
最初に変えるのは、どこでしょうか?
頼み方を、「相談」と「指示」に分けることです。
年上の部下に対して、管理職は何でも相談の形で頼みがちです。「これ、お願いできますか」「どう思われますか」。丁寧ですが、相談なのか指示なのかが伝わりません。
分け方はこうです。
| 種類 | 言い方の例 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 相談 | 「進め方について、経験から意見をもらえますか」 | 相手の経験が判断に効くとき |
| 指示 | 「この資料を金曜までにお願いします。ここまでの出来を期待しています」 | 判断はもう決まっていて、動いてほしいとき |
相談したら、意見を聞いたうえで最後は自分が決めます。指示したら、期限と期待する出来をはっきり言います。この二つが混ざると、年上の部下は「意見を聞かれたのに採用されなかった」「指示なのか分からなかった」と感じます。

経験の長い部下に、どう評価を伝えればいいのでしょうか?
過去の実績ではなく、いまの役割に対して伝えます。
評価の面談で難しいのは、相手のほうが会社の歴史も業務も知っていることです。ここで過去の実績を持ち出すと、話が「昔はこうだった」に流れます。
評価は、いまの役割に対してつけるものです。面談の最初に「今期お願いしている役割はこれです」と確かめてから、その役割に対してどうだったかを話す。順番を守るだけで、話はかなり落ち着きます。
役割そのものに本人が納得していないこともあります。その場合は、評価の前に役割の話をし直します。評価の場で役割の不満が出てきたら、それは評価の問題ではなく、渡し方の問題が先に残っていたということです。
年上の部下に、助けられる場面はあるのでしょうか?
あります。社内の事情と、過去に起きたことを知っているのは、たいてい年上の部下です。
なぜこの手順になっているのか。前に同じことをして、何が起きたのか。年上の部下は、管理職が知らない事情を知っています。そこを相談の形で借りられるようになると、年上の部下は扱いにくい人ではなく、いちばん頼りになる人になります。

よくある質問
年上の部下に敬語を使うべきですか?
使ってかまいません。大事なのは言葉づかいではなく、期限と期待する出来を言うかどうかです。敬語のままでも、指示ははっきり出せます。
元上司が部下になったときは、どうすればいいですか?
最初の面談で、いまの役割と期待していることを言葉にして伝えるのがいちばんです。昔の関係を引きずるより、新しい役割をはっきりさせたほうが、お互いに楽になります。
どうしても関係が改善しないときは?
一人で抱え込まず、自分の上司や人事に相談してください。配置の問題は、課長一人で解決できないこともあります。
まとめ
- 役職定年や65歳までの雇用で、年上の部下はこれから増える
- こじれるのは敬意の量ではなく、遠慮であいまいになった仕事の渡し方
- 年上の部下は、管理職が「決めているか」を見ている
- 頼み方を「相談」と「指示」に分ける。指示には期限と期待する出来を付ける
- 評価は過去の実績ではなく、いまの役割に対して伝える
年上の部下との関係は、遠慮を減らしたほうが、かえって丁寧になります。
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出典
- 東京商工リサーチ 役職定年制に関する企業調査(2025年6月・6,483社)
- 産業能率大学 総合研究所「第7回 上場企業の課長に関する実態調査」(2023年10月)
- 株式会社あしたのチーム「年上の部下との関わり方に関する調査」(2024年10月)
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」