プレイヤーのときは評価が高かったのに、管理職になってから急にうまくいかなくなった。そういう人を、私は何人も見てきましたし、自分にもそういう時期がありました。
この流れには、半世紀以上前から名前が付いています。ピーターの法則です。この記事では、法則の中身と、評価をつける側から見たときに、なぜこれが起きるのかを書きます。
ピーターの法則とは、何なのでしょうか?
階層のある組織では、人はうまくやれているあいだ昇進を続け、うまくやれなくなった地位で止まる、という考え方です。
1969年に、アメリカの教育学者ローレンス・J・ピーターが、レイモンド・ハルとの共著『ピーターの法則』で書きました。本の中では、人はそれぞれ「無能のレベル」まで昇進する、という言い方をしています。
この本は、学術的な証明ではなく、組織を皮肉るために書かれたものです。ただ、長く読み継がれているのは、多くの人が自分の職場に思い当たる場面を見つけるからだと思います。
なぜ、うまくやれなくなる地位まで昇進するのでしょうか?
昇進は、いまの仕事の出来を見て決まるからです。
昇進を決めるとき、会社が見ているのは、いまの役割での成果です。営業成績が良い人、プロジェクトをきちんと回した人が、次の役職に上がります。
ところが、次の役職で要る力は、いまの役割で見えている力とは違うことがあります。現場でいちばん売る力と、売る人を育てる力は別物です。昇進を決める時点では、次の席で要る力はまだ誰も見ていません。ここにずれが生まれます。

管理職になって苦しくなるのは、能力が足りないからなのでしょうか?
能力の問題というより、昇進の決め方がそうなっている、と読むこともできます。
ピーターの法則が言っているのは、本人の能力が低いということではありません。うまくやれる場所から、うまくやれない場所へ、仕組みとして押し上げられる、ということです。
評価をつける側から見ていると、管理職でつまずく人の多くは、プレイヤーとしては確かに優秀でした。つまずいたのは、能力が消えたからではなく、求められる仕事の中身が変わったからです。
そう読むと、苦しさの見え方が少し変わります。自分が劣っているのではなく、役割が変わったのに、まだ前の役割のやり方で戦っている、ということかもしれません。
評価をつける側は、どうやってこれを避けようとしているのでしょうか?
昇進の前に、次の役割の一部を試しに任せる会社が増えています。
代表的なのは、こんなやり方です。
- 昇進の前に、小さなチームのまとめ役を任せてみる
- 管理職の候補を、研修や面談で次の役割に合わせて見る
- 昇進したあとも、一定の期間で役割を見直す(役職の任期制など)
私が評価をつけるときも、いまの成果だけでなく、「この人は人に任せられるか」「決めたことを説明できるか」を見るようにしています。完全には避けられませんが、ずれを小さくすることはできます。

自分がピーターの法則に当てはまると感じたら、どうすればいいのでしょうか?
前の役割で評価された仕事を、意識して手放すことから始めます。
管理職になってもうまくいかない人の多くは、プレイヤーの仕事を抱えたままです。得意な仕事に戻ると安心できるからです。ただ、それを続けるほど、管理職の仕事に使う時間がなくなります。
次の役割で求められていることを、自分の上司に一度聞いてみる。そのうえで、前の役割の仕事を一つずつ部下に渡していく。法則の流れから抜けるのは、多くの場合この順番です。
よくある質問
ピーターの法則は、科学的に証明されているのですか?
もともとは風刺として書かれた本です。昇進と成果の関係を調べた研究もありますが、この記事では、組織で起きやすい現象を説明する考え方として紹介しています。
昇進を断れば、ピーターの法則は避けられますか?
避けられることもありますが、断ったあとのことも考える必要があります。別の記事(昇進を断ると、そのあと何が起きるのか)で書いています。
まとめ
- ピーターの法則は、人はうまくやれなくなる地位まで昇進する、という1969年の考え方
- 昇進はいまの仕事の出来で決まり、次の席で要る力はまだ見えていない
- 管理職で苦しくなるのは、能力が消えたのではなく、役割が変わったから
- 会社は、昇進前に次の役割を試す形でずれを小さくしようとしている
- 抜け出す第一歩は、前の役割で評価された仕事を手放すこと
向いていなかったのではなく、決め方がそうなっていた。そう読み直すと、次の一手が見えやすくなります。
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出典
- ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル『ピーターの法則』(1969年)