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早期退職と希望退職の違い|会社都合になるのはどちらか、分ける軸は1つだけです【厚労省の基準】

社内メールに「制度のご案内」という件名が並ぶ日があります。開くと、退職金の上乗せと、応募の締切が書いてある。

このとき配られる紙は、ぜんぶ同じものに見えます。ですが、早期退職と希望退職は別のものです。そして違いが効いてくるのは、辞めたあとです。

この記事は「応募すべきかどうか」の話ではありません。配られた紙がどちらなのかを、自分で見分けるための話です。

分ける軸は、1つしかありません

早期退職と希望退職を分ける軸は、次の1つだけです。

ずっと前から会社にある制度なのか。いま人を減らすために始めた募集なのか。

金額の大小でも、対象年齢でもありません。制度が「いつからあるか」です。

前からある制度は、会社の福利厚生として置かれているものです。人が減っても減らなくても、毎年そこにあります。いっぽう人員整理のための募集は、必要になったときに始まり、期間が来れば終わります。

この違いを、国が明文で区別しています。

「希望退職の募集」には、3つの条件があります

厚生労働省は、離職票を発行するときの判断基準として、希望退職の募集をこう定義しています。

名称を問わず、人員整理を目的とし、措置が導入された時期が離職前1年以内であり、かつ募集期間が3か月以内である場合をいう。(厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」)

条件は3つです。

  • 人員整理が目的であること
  • 始まったのが、辞める日から1年以内であること
  • 募集の期間が3か月以内であること

「名称を問わず」と書かれているのが大事なところです。社内でどう呼ばれていても、この3つが揃えば希望退職の募集として扱われます。逆に、名前が「希望退職」でも3つが揃わなければ、そうは扱われません。

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早期退職優遇制度は、明文で除外されています

では、前からある制度はどうなるか。ハローワークの資料に、はっきりと書かれています。

従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。(ハローワークインターネットサービス)

「これに該当しない」の「これ」とは、会社都合として扱われる区分のことです。

つまり、前からある早期退職優遇制度に自分で手を挙げた場合は、自己都合になります。同じように自分で応募していても、扱いは同じではありません。

机の上の紙に、一本の線が途中で三つに分かれて描かれている

雇用保険の扱いは、3つに分かれます

ここまでを、雇用保険の側から整理するとこうなります。

どういう辞め方か区分給付制限
3つの条件を満たす希望退職の募集に応じた特定受給資格者(会社都合)なし
希望退職だが条件を満たさない特定理由離職者なし
前からある早期退職優遇制度に応募した一般の自己都合原则1か月

給付制限は、2025年4月1日以後に辞めた人は原则1か月です。それ以前は2か月でした。3か月だと思っている場合、情報が古い可能性があります。

なお、最終的にどの区分になるかを決めるのは、会社ではなくハローワークです。会社が離職票に書いた理由のとおりになるとは限りません。納得できないときは、窓口で異議を申し立てられます。

2025年に何が起きていたか

東京商工リサーチの集計です。

  • 募集した会社:43社(前年57社から24.5%減)
  • 募集人数:17,875人(前年比 78.5%増)
  • 2009年以降で3番目に多い水準
  • 黒字企業が29社(67.4%)で、その募集人数が全体の 85.0%

社数は減ったのに、人数は増えています。1社あたりの規模が大きくなったということです。

そして募集人数の85%が黒字企業のものでした。「業績が悪いから募集する」とは限らない、という数字です。

2025年度(2025年4月〜2026年3月)で見ると46社・20,781人で、前年度の8,326人から約2.5倍になっています。

なお、年代別の内訳を示した公的な統計はありません。「45歳以上が狙われている」といった言い方は、個別の事例からの推測です。実際に公表されている事例では、三菱ケミカルグループが50歳以上、三菱電機が満53歳以上といった条件が設定されていました。

机の上に、厚みの違う紙の束が二つ並べて置かれている

上乗せされた退職金には、税金がかかります

割増金は、退職金に上乗せされる形で支払われるのが一般的です。これは退職所得として扱われます(所得税基本通餄30-1)。毎月の給与とは計算のしかたが違います。

  • 退職所得控除:勤続20年超なら 800万円+70万円×(勤続年数−20年)
  • (収入金額 − 控除額)× 1/2 が課税対象
  • 他の所得と分けて計算する(分離課税)

勤続30年なら控除は1,500万円です。この範囲なら税金はかかりません。ただし非課税というわけではありません。控除を超えた分には課税されます。

1つ注意があります。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していないと、控除が使われず、支給額の20.42%がそのまま源泉徴収されます。あとで確定申告すれば戻りますが、手間がかかります。

断ることはできます

早期退職も希望退職も、応募するかどうかを決めるのは本人です。

労働政策研究・研修機構(JILPT)は、退職勧奨について「説得活動」であり、労働者には拒否する権利があり、拒否に対する報復措置は違法である、としています。

実際に、退職勧奨のやり方が違法と判断された裁判例もあります。下関商業高校事件(最高裁 昭和55年7月10日)では、3〜4か月のあいだに11〜13回にわたって行われた勧奨が違法とされました。

断ったことを理由に不利益な扱いを受けた場合は、それ自体が別の問題になります。

よくある質問

希望退職に応じれば、必ず会社都合になりますか?

なりません。3つの条件を満たすかどうかで変わります。そして最終的な判断はハローワークが行います。「必ず」と説明されたら、根拠を確認したほうがいいです。

早期退職優遇制度でも、会社都合にしてもらえませんか?

恒常的に設けられている制度への応募は、厚生労働省の資料で明文的に除外されています。会社の判断で変えられるものではありません。

募集に応じないと、あとで解雇されますか?

希望退職の募集は、会社が解雇を避けるためにやることの1つとして位置づけられています。募集をしたからといって、次が解雇と決まるわけではありません。ただし、募集の結果が思わしくないときに次の手段が検討されることはあります。

上乗せ分はいくらが相場ですか?

公的な相場のデータはありません。会社ごとに、また勤続年数や役職によって変わります。金額そのものより、退職所得として扱われるかどうかを確認したほうが実益があります。

40代・50代の方へ

配られた紙がどちらなのかは、応募の期限より前に分かります。制度の導入時期と募集期間を見れば判断できるからです。

そのうえで、応募するかどうかは別の話です。自分がいまどの段階にいるのかを先に整理しておくと、判断しやすくなります。

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参考にした一次資料

  • 厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
  • ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」
  • 国税庁 タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき」
  • 東京商工リサーチ「2025年 上場企業『早期・希望退職』募集状況」
  • 労働政策研究・研修機構 判例データベース(下関商業高校事件)

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