辞めたいと思っている期間が、いつの間にか半年を超えていることがあります。毎朝そう思うのに、誰にも言っていない。
この記事は「辞めるべきかどうか」を決める記事ではありません。実際に辞めた30代が、何を理由に挙げたのかを厚生労働省の調査で確かめたうえで、辞表を受け取る側から見えていることを書きます。
先に結論を書きます。辞めたい理由は、30代の前半と後半で入れ替わります。
30代前半は「お金と時間」、30代後半は「会社の先行き」
男性は、30代前半では給料と労働条件が上位ですが、30代後半になると「会社の将来が不安だった」が1位に変わります。
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(2026年8月31日公表)の表5です。転職した男性が、前の会社を辞めた理由として挙げたものです。
| 辞めた理由 | 30〜34歳 | 35〜39歳 |
|---|---|---|
| 会社の将来が不安だった | 10.0% | 12.7% |
| 給料等収入が少なかった | 13.4% | 11.2% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 13.0% | 11.1% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 5.9% | 9.5% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 5.2% | 6.9% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 9.0% | 5.5% |
30代前半で上位にある「給料」と「労働条件」は、自分の条件の話です。30代後半で1位になる「会社の将来」は、会社そのものの話です。見ている場所が、自分から会社へ移っています。
もう1つ、はっきり動いている項目があります。職場の人間関係が、5.9%から9.5%へ、1.6倍になります。30代後半は、多くの人が人を見る側に回りはじめる時期です。逃げ場が減る、という言い方のほうが近いかもしれません。
この数字が言っていないこと:単一回答です。「人間関係も給料も」という人は、どちらか1つに圧縮されています。また、辞めた人ではなく辞めて次の会社に入った人の回答なので、辞めたいまま留まっている人は入っていません。
女性は、前半が人間関係、後半が労働条件です
同じ30代でも、男女で上位が違います。
| 辞めた理由 | 女性30〜34歳 | 女性35〜39歳 |
|---|---|---|
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 10.1% | 13.7% |
| 給料等収入が少なかった | 12.2% | 8.5% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 10.6% | 8.3% |
| 会社の将来が不安だった | 7.8% | 3.9% |
| 出産・育児 | 6.2% | 3.4% |
目立つのは2つです。30代前半の「人間関係」10.6%は、同年代の男性5.9%のおよそ2倍。そして「会社の将来が不安」は、女性では30代後半に3.9%まで下がります(男性は12.7%)。
会社の先行きを理由に辞めるのは、男性に偏っています。女性は、いま自分が置かれている時間と条件のほうを理由に挙げています。
去年から、何が変わったか
30代前半は「会社の将来が不安」が減り、30代後半は増えました。同じ30代のなかで、逆方向に動いています。
| 男性・会社の将来が不安だった | 令和6年 | 令和7年 | 差 |
|---|---|---|---|
| 30〜34歳 | 14.9% | 10.0% | −4.9pt |
| 35〜39歳 | 10.5% | 12.7% | +2.2pt |
去年は30代前半のほうが会社の先行きを気にしていました。今年は逆転しています。
この数字が言っていないこと:1年の差であって、統計的に意味のある差かどうかは検定されていません。調査対象の事業所も毎年入れ替わります。
辞めたあと、賃金はどう動いているか
30代は、増えた人が減った人を約20ポイント上回っています。ただし「増えた」の割合は去年より下がりました。
| 年齢 | 増加 | 変わらない | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|---|
| 30〜34歳 | 48.6% | 20.8% | 29.0% | +19.6pt |
| 35〜39歳 | 43.5% | 28.1% | 23.9% | +19.6pt |
30代前半は「増えた」も「減った」も多く、30代後半は「変わらない」が増えます。年齢が上がるほど、動かしたときの振れ幅が小さくなります。
なお35〜39歳の「増加」は、令和6年の45.5%から2.0ポイント下がっています。去年より上がりにくくなった、という読み方はできます。
この数字が言っていないこと:業種・職種・企業規模を統制していません。転職しなかった人と比べたものでもないので、「辞めたから上がった」とは読めません。
辞める人は、辞めると言う前に「聞かなくなる」
辞表より先に止まるのは、質問です。
私はデジタルマーケティングとECの領域で働いていて、いまは評価をつける側にいます。辞めますと言われる側でもあります。
不思議なもので、辞める直前の人ほど、仕事が雑になりません。むしろ丁寧になることのほうが多いです。落ちるのは成果ではなく、こちらへの相談の量です。
順番はだいたい決まっていて、まず「どうしましょうか」が「こうします」に変わります。次に、半年先の話に乗ってこなくなります。来期の体制や、再来月の企画の話をすると、返事が一段だけ短くなる。
ここまで来た人は、もう決まっています。この段階で引き止めても、だいたい戻りません。決めたあとに条件を足されても、決めた理由のほうが消えないからです。
逆に言うと、まだ聞いている段階なら、決まっていません。不満があっても質問が続いているうちは、動くかどうかを本人もまだ決めていない。もし自分がいまどちらか分からないなら、直近1か月で、半年先の話を自分から出したかどうかを思い出してみてください。
「辞めたい」を3つに分けて考える
辞めたい気持ちは1つに見えますが、打ち手は3つに分かれます。
| 何が嫌か | 厚労省の表でいうと | 効く手 |
|---|---|---|
| 仕事が合わない | 仕事の内容に興味を持てなかった/能力を生かせなかった | 社内の異動でも変わることがある |
| 会社が嫌 | 会社の将来が不安だった/職場の人間関係 | 会社を変えるしかない |
| 状態が悪い | この表に項目がありません | まず休む。転職の判断はそのあと |
3番目が大事です。「疲れている」という理由は、統計に出てきません。辞めて次の会社に入った人の回答だからです。動けないほど消耗している段階の人は、この表にそもそも含まれていません。
眠れない日が続いている、休みの日も回復しない、朝に動悸がする。そういう状態のときは、転職先を探すより先に、休むか、医療機関にかかるほうが順番として早いです。疲れているときに決めた進路は、回復したあとに見ると別の判断になることがあります。
会社の産業医や健康相談の窓口は、人事を通さずに使えることがほとんどです。使ったことが評価に出る仕組みにはなっていません。
社内の誰にも聞けないときに、外で話す
3つに分けるところまでは、一人でもできます。難しいのは、そのどれなのかを自分では決めにくいことです。仕事が嫌なのか、会社が嫌なのか、ただ疲れているのか。
社内の人に聞くと、どうしても利害が入ります。上司は引き止める側ですし、同僚に話せば残る前提の話になります。
外に話す先としては、転職ありきではないキャリア相談のサービスがあります。coachee(コーチー)は、現役の社会人が相談に乗る形で、1回ごとの買い切りで使えます。転職エージェントと違って、相談の結果「動かない」でも成立するのが、この段階では使いやすいところです。

もちろん、相談しないで決めても構いません。ここで言いたいのは、3つのどれなのかを言葉にできれば、あとの判断は自分でできるということです。
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よくある質問
辞めたいと思ってから、どれくらいで動くべきですか?
決まった期間はありません。ただ、「半年先の話に乗れなくなった」かどうかは、自分でも分かる目安になります。乗れているうちは、まだ決まっていません。
上司に相談してもいいですか?
相談の中身によります。仕事の内容や配置の話なら、上司に言う価値があります。動かせる立場にいるからです。一方、会社の将来や制度の話は、上司にも動かせません。ここを混ぜて話すと、相手が答えられない話をすることになります。
30代後半だと、転職は不利になりますか?
賃金で見るかぎり、極端には落ちません。35〜39歳では増加43.5%に対して減少23.9%です。ただし「変わらない」が28.1%で、30代前半より増えます。詳しくは30代後半の転職で、賃金は上がるのか下がるのかにまとめました。
疲れているだけなのか、本当に辞めたいのか分かりません
眠れているかどうかで、いったん分けてみてください。睡眠が崩れている状態で進路を決めるのは、順番として早いです。休んでも戻らないときは、産業医や医療機関に相談するほうが確実です。判断はそのあとでも間に合います。
40代・50代の方へ
この記事は30代の数字ですが、同じ問いが、もう一度40代で来ます。そのときは「会社の将来」ではなく「自分の残り時間」の話になります。
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参考にした一次資料
厚生労働省「令和7年(2025年)雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)表5「転職入職者が前職を辞めた理由別割合」、表6「転職入職者の賃金変動状況別割合」
厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表5・表6