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名ばかり管理職とは?残業代が出ない人と出る人の違い【厚労省の判断基準】

2026年9月13日

胸に大きな名札を下げて正面に立つ会社員のイラスト

課長になった年に残業代がつかなくなった、という話をよく聞きます。

役職が上がったのだから当然だ、と受け止める人もいれば、仕事量は増えたのに手取りが減った、と感じる人もいます。どちらの受け止め方も、実際に起きていることとしては珍しくありません。

ただ、管理職になったから残業代が出ない、という理解は正確ではありません。

労働基準法で残業代の対象から外れるのは「管理監督者」であって、会社が決めた「管理職」とは別の言葉です。そして管理監督者にあたるかどうかは、肩書きではなく実態で判断されます。

この記事では、厚生労働省が公表している資料をもとに、その線がどこに引かれているのかを整理します。そのうえで、管理職を置く側にいた立場から見えていたことを書きます。


名ばかり管理職とは、どういう状態を指すのか

「名ばかり管理職」は法律用語ではありません。肩書きの上では管理職なのに、実態としては管理監督者の要件を満たしていない状態を指す言い方です。

厚生労働省の資料には、判断のしかたがはっきり書かれています。

肩書や職位ではなく、その労働者の立場や権限を踏まえて実態から判断する必要があります。

出典:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」

つまり、名刺に何と書いてあるかは関係がありません。就業規則で「課長以上は管理職とする」と決めてあっても、それだけで管理監督者になるわけではない、ということです。


管理監督者でも、出るものがあります

ここが、いちばん誤解されている部分だと思います。

労働基準法41条で適用から外れるのは、労働時間・休憩・休日の3つだけです。それ以外は外れません。

これらの労働者についても、深夜労働に対する割増賃金、年次有給休暇に関する規定は適用除外になりません。

出典:厚生労働省 長野労働局「労働条件ハンドブック」

整理すると、こうなります。

管理監督者にあたる場合
時間外(残業)の割増賃金対象外
休憩・休日の規定対象外
深夜(22時〜5時)の割増賃金適用される
年次有給休暇適用される

「管理職だから何も出ない」という説明を社内で聞いたことがある人は、少なくないと思います。ただ、深夜割増と有給については、管理監督者であっても外れません。


判断は4つの要素を総合して行われます

厚生労働省は、管理監督者にあたるかどうかを次の4点から総合的に判断するとしています。

  1. 職務内容が、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要なものであること
  2. 経営者から重要な責任と権限を委ねられていること
  3. 勤務態様が、労働時間等の規制になじまないものであること
  4. その地位にふさわしい待遇がなされていること

読むと分かるとおり、4つのうち3つまでが「権限」と「裁量」の話です。残る1つが待遇です。

言い換えると、「決める側にいるか」が中心にあります。時間を自分で決められない立場で、人についても決められないのであれば、肩書きが何であっても4つの要素は満たしにくくなります。


管理監督者性を「否定する」要素は、具体的に挙げられています

打刻機の前に並ぶ管理職と社員のイラスト

厚生労働省の資料には、管理監督者性を否定する重要な要素として、次のものが挙げられています。ここが実務では一番はっきりしています。

  • 採用に関する責任と権限が実質的にない
  • 解雇が職務内容に含まれておらず、実質的にも関与しない
  • 人事考課に関与しない
  • 勤務割表の作成、または所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない
  • 遅刻・早退等により減給の制裁、または不利益な取扱いがされる
  • 時間単価に換算した賃金額が、最低賃金額に満たない

さらに、補強的な要素として次のものも挙げられています。

  • 労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる
  • 基本給・役職手当等の優遇措置が十分でない
  • 賃金の総額が、一般労働者の賃金総額と同程度以下である

「遅刻で減給される管理職」は、ここに引っかかります

上のリストのなかで、自分で確かめやすいのは5番目だと思います。

管理監督者は、労働時間の規制から外れている立場です。その人が遅刻を理由に減給されるのは、外れているはずの時間で管理されているということになります。厚生労働省が否定要素として挙げているのは、そういう理由です。

タイムカードを押すこと自体は問題になりません。会社には労働時間を把握する義務があり、管理監督者についても健康管理の観点から把握が求められます。押すかどうかではなく、その記録で不利益な扱いを受けるかどうかが分かれ目になります。


管理職を置く側から見えていたこと

壁に貼られた組織図の四角を指している二人のイラスト

ここからは、資料の話ではなく、現場で見てきたことを書きます。

組織図を作るとき、課長職をどこに置くかという話は、たいてい出ます。そのときに議論になるのは、たいてい人数です。部下が何人いるか、いなければ課にできるか。

一方で、その人に何を決めさせるかは、後回しになりがちです。採用の面接に出るのか。評価をつけるのか。残業を命じる権限を持つのか。ここを決めないまま肩書きだけが先に決まることがあります。

そうなると、本人からは景色がこう見えます。責任だけが増えて、決められることは増えていない。これが「名ばかり」と呼ばれる状態の中身だと思います。

逆に、実態が伴っている管理職には共通点があります。自分の判断で人の配置を動かせること。 これが一つでもあるかどうかで、同じ課長でも仕事の質が変わります。

もう一つ、外から見ていて分かることがあります。管理監督者かどうかが曖昧な会社は、たいてい他のところも曖昧です。 権限の線が引かれていないので、誰が決めたのか後から辿れません。制度の問題というより、決め方の問題として現れます。


よく聞く3つの誤解

現場で耳にすることの多いものを、3つ挙げます。

1.「就業規則に管理職と書いてあるから、管理監督者だ」

これは違います。厚生労働省の資料が示しているとおり、判断は肩書きや職位ではなく実態から行われます。 就業規則の定義は、会社の中での呼び方を決めているだけです。

2.「役職手当が出ているから、管理監督者だ」

待遇は4つの要素のうちの1つです。それだけで決まるわけではありません。 むしろ厚生労働省は、賃金の総額が一般の労働者と同程度以下である場合を、管理監督者性を否定する補強要素として挙げています。手当が出ていること自体は、要素の一部にすぎません。

3.「管理職だから、有給は取りにくい」

制度としては、年次有給休暇は管理監督者にも適用されます。 取りにくい空気があるかどうかは別の問題で、法律上の扱いとは分けて考えられるものです。

固定残業代(みなし残業)とは別の話です

ときどき混ざるのですが、固定残業代は「一定時間分の残業代をあらかじめ払っておく」仕組みで、管理監督者かどうかとは別の制度です。固定残業代が設定されている人は、そもそも残業代の対象になっています。設定された時間を超えた分については、追加で支払われるのが原則です。


自分がどちらなのかを確かめるとき

個別の判断は、この記事ではできません。同じ肩書きでも、権限の持たせ方は会社ごとに違うからです。

確かめる先としては、次のようなところがあります。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局・労働基準監督署内)。無料で、予約も要りません
  • 労働基準監督署
  • 労働問題を扱う弁護士・社会保険労務士

相談の前に手元にあると話が早いのは、就業規則の該当箇所、賃金の内訳が分かるもの、勤務時間の記録です。厚生労働省の資料に挙げられている否定要素と照らし合わせると、どこが論点になるのかが見えやすくなります。


肩書きではなく、何を決めているか

まとめます。

  • 名ばかり管理職とは、肩書きだけ管理職で、実態が伴っていない状態を指す言い方です
  • 法律で外れるのは労働時間・休憩・休日の3つだけ深夜割増賃金と年次有給休暇は、管理監督者でも適用されます
  • 判断は4つの要素を総合して行われ、そのうち3つが権限と裁量の話です
  • 厚生労働省は、管理監督者性を否定する要素を具体的に挙げています。採用・解雇・人事考課・残業命令の権限がないこと、遅刻で減給されることなどです

40代以降になると、肩書きは自分の市場価値と結びつけて考えられがちです。ただ、外から評価されるときに見られるのは肩書きそのものではなく、その立場で何を決めてきたかのほうでした。採用する側に回ってみると、そこはかなりはっきり分かれます。

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出典

  • 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanri.pdf
  • 厚生労働省 長野労働局「労働条件ハンドブック」9 労働時間、休憩、休日の適用除外

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