「IT業界は人手不足」と書いてある記事を3つ読んで、求人に応募して、書類で落ちる。40代でWEB・IT系を見はじめた人から、いちばんよく聞く話です。
不足しているのは本当です。ただし不足の中身と、40代が入れるかどうかは、別の話です。
この記事では、よく引用される数字が実際には何を言っているのかを一次資料で確かめたうえで、採用する側から見て書類がどこで止まるのかを書きます。
「IT人材が2030年に79万人不足」は、2019年に作られた数字です
この試算は経済産業省が2019年3月に公表したもので、2026年9月の時点でも更新版は出ていません。
中身はこうです。IT需要の伸びをどう置くかで、結果が3通りに分かれます。
| 前提 | 2030年の不足数 |
|---|---|
| 低位(IT需要の伸び 年1%) | 16.4万人 |
| 中位 | 44.9万人 |
| 高位(同 年3〜9%) | 78.7万人 |
記事でよく見る「79万人」は、いちばん強気な前提を置いたときの数字です。
そして大事なのは、これが生成AIが広まる前に作られた試算だということです。開発の生産性が変われば必要な人数も変わりますが、その前提は入っていません。
この数字が言っていないこと:推計であって実測ではありません。職種別でも年齢別でもなく、40代の求人が何件あるかを示すものではありません。
不足しているのは事実です。ただし足りないのは頭数より「質」です
企業が「大幅に不足」と答えている割合は、量より質のほうが高くなっています。
情報処理推進機構(IPA)が2026年7月に公表した「DX動向2026」の数字です。1,799社の回答です。
| 大幅に不足 | やや不足 | 特に過不足なし | |
|---|---|---|---|
| DX推進人材の量 | 50.1% | 35.4% | 14.5% |
| DX推進人材の質 | 52.9% | 35.9% | 9.4% |
不足感の合計は、量が85.5%、質が88.8%です。人数を埋めたいのではなく、できる人が欲しいと言っています。
ここが「人手不足なのに書類で落ちる」の正体です。募集はしているけれど、育てて埋める枠ではないということです。
この数字が言っていないこと:企業が主観で答えた不足感であって、必要人数の実測ではありません。年齢別の採用意向は聞いていません。
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情報通信業に入ってくる人の比率は、全産業の平均より低いです
人が足りない業界と、人が入りやすい業界は、同じではありません。
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」(2026年8月31日公表)の産業別の数字です。
| 情報通信業 | 産業計 | |
|---|---|---|
| 入職率 | 13.6% | 14.7% |
| 転職入職率 | 9.4% | 9.9% |
| 離職率 | 10.4% | 13.7% |
| 入職超過率 | +3.2pt | +1.0pt |
転職入職率は16産業のうち7番目で、産業計を下回っています。上にいるのはサービス業(17.5%)、宿泊業・飲食サービス業(15.6%)、生活関連サービス業・娯楽業(14.8%)です。
ただし入職超過率は+3.2ポイントで、人は増えています。入ってくる人のほうが、出ていく人より多い。つまり「人が減っているから募集している」のではなく、増やしながら募集している業界です。
この数字が言っていないこと:事業所規模5人以上の常用労働者が対象の「産業」区分の数字で、エンジニアなどの職種別でも年齢別でもありません。
40代で転職した人の賃金は、どちらに動いているか
40代前半までは、増えた人が減った人を上回っています。ただし40代後半でその差は縮みます。
| 年齢 | 増加 | 変わらない | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 44.9% | 24.6% | 27.4% | +17.5pt |
| 45〜49歳 | 41.1% | 28.0% | 30.1% | +11.0pt |
| 全年齢計 | 40.8% | 25.5% | 31.0% | +9.8pt |
40〜44歳では、増加のうち「1割以上増えた」が29.9%です。減少のうち「1割以上減った」は17.6%。上がるときも下がるときも、動く幅は小さくありません。
この数字が言っていないこと:業種・職種・企業規模を統制していません。IT業界への転職に限った数字ではありません。転職しなかった人と比べたものでもないので、「転職したから上がった」とは読めません。
採用する側から見ると、書類はここで止まります
「何ができるか」ではなく「何をどう決めたか」が書かれていない書類が止まります。
私はデジタルマーケティングとECの領域で働いていて、いまは評価をつける側にいます。中途の書類も見ます。
止まりやすいのは、ツール名と担当範囲だけが並んでいる書類です。広告運用の経験、分析基盤の導入、サイトのリニューアル。どれも書いてあるのに、読み終えて何も残らない。使えることは前提なので、そこでは差がつかないからです。
先に進むのは、うまくいかなかったときの話が書いてある書類です。数字が落ちたときに何を疑ったか、どこから手をつけたか、やめる判断をいつしたか。それが1つ書いてあるだけで、読む側の見え方が変わります。
40代に求められているのは、手を動かす速さではありません。判断が再現するかどうかです。そしてそれは、うまくいった話ではなく、外したときの話に出ます。
40代の武器は「WEB系の経験」ではなく「事業側の経験」です
未経験からエンジニアに移る線は、40代では細いです。質の不足=即戦力が欲しいという状態なので、育てる枠が用意されていません。
ただし、IT・WEB系の求人はエンジニアだけではありません。
- EC・通販の運営や、売上をつくる側のポジション
- デジタルマーケティング(広告、CRM、サイト改善)
- 社内のデータ活用や、業務のデジタル化を進める役
- ベンダーと現場のあいだに立つプロジェクトマネージャー
これらは業界知識と、社内を動かした経験そのものが値段になります。40代がこれまでやってきたことを、そのまま持ち込める場所です。
もう一つ。「IT業界に転職する」と「いまの業界で、デジタル側に回る」は別の話です。40代では後者のほうが通りやすく、そのうえで数年後にIT業界へ移るほうが、書類に書ける材料が増えます。
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よくある質問
人手不足なのに書類で落ちるのは、なぜですか?
企業が「大幅に不足」と答えている割合は、量50.1%に対して質52.9%です。頭数ではなく、できる人が足りないと言っています。育てて埋める枠ではないので、未経験の応募は数が多くても通りません。
資格は効きますか?
書類を通すという意味では、資格より「判断が書いてあるかどうか」のほうが効きます。ただしまったく別の業界から移る場合は、話を聞いてもらうきっかけになります。資格が仕事を決めるのではなく、入り口を1つ増やすものだと考えたほうが近いです。
40代でも年収は上がりますか?
厚労省の調査では、40〜44歳の転職者のうち44.9%が増加、27.4%が減少です。ただし業種を統制していない全産業の数字なので、IT・WEB系に限った話ではありません。
どの年の調査を見ればいいですか?
雇用動向調査は毎年8月末ごろに前年ぶんが公表されます。この記事は2026年8月31日公表の令和7年調査を使っています。IT人材の需給推計のほうは2019年3月のものが最新で、そこから更新されていません。
あわせて読む
書類の中身をどう書くかは、40代で「職務経歴書に書くことがない」と感じたときに、何を書けばいいのかにまとめました。この記事で書いた「判断が書いてあるか」を、実際の書き方に落としたものです。
転職そのものをどう進めるかは、40代の転職はまだ間に合う?成功するための完全ガイドのほうが全体像が見えます。
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この記事の数字は、産業全体のものです。自分がどこにいるかは、平均では分かりません。
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参考にした一次資料
厚生労働省「令和7年(2025年)雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)表4-2「産業別の入職と離職」、表6「転職入職者の賃金変動状況別割合」
経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年3月・みずほ情報総研委託)
情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」(2026年7月30日公表・有効回答1,799社)